トップアスリートの高校時代 オリンピアン【第5回】 山田かがり (Vol.5 )日本代表としてアトランタ五輪に出場
オリンピックに出た“レジェンド”たちはいったいどんな高校時代を送ってきたのか、昔を振り返っていただきました。それとともに、高校生プレイヤーへの熱いメッセージも。リレー方式でつないでご紹介します。ミラ(永田睦子さん)から指名されたのは、山田かがりさんがリターパスをキャッチしました。
山田かがり選手は、守山中(愛知)ではチームの全国優勝を8連覇に伸ばし、名古屋短付高校(現・桜花学園高校:愛知)でも名門チームのエースとして活躍。実業団ではシャンソン化粧品から富士通で活躍しました。高校時代からしぶといゴール下とサウスポーを生かしたシュートには定評があり、リバウンドやルーズボールと、球際の強さから玄人受けするプレイヤーとして名をはせました。
日本代表としても高校時代に世界選手権メンバーに選出され、アトランタ五輪、バンコクアジア大会に出場を果たしています。コートネームは名前のまま「かがり」。お父さんが命名したように、かつては灯台のかわりとなった篝火(かがりび)。そのあかりのように、周囲を照らし続けた選手です。一線を退いた後は指導者に転身。女子バスケットボール界を引っ張ってきた一人といえます。
山田かがり
アトランタ五輪メンバーに選ばれた喜び
うれしかった粘り強いプレイへの評価
シャンソンでは12年プレイしました。ようやく5年目ぐらいからですかね、光が見えるようになったのは。
アトランタ五輪(1996年:アメリカ)は6年目の年24歳でした。その前年の静岡ABC(1995年:女子アジア選手権)では、オリンピック行きをかけた3位決定戦のチャイニーズ・タイペイ戦で、最後は自分でゴール下シュートを落とし、セカンドショットで逆転シュート決めました。あれを落としていたらA級戦犯でした(笑)。楽勝できるはずが、クロスゲームになった試合でした。それまで全然ダメだったのに、この試合だけは調子がよくて、最後まで使ってもらっていました。
美味しいシュート(笑)を決めて、「(五輪)メンバーに選ばれるかな」と思いつつも、スターターではないし、確約されたものではない。たまたまシュートが入っただけ。だから選ばれるかどうか、気が気ではありません。ボーダーラインだと思っていました。そんな心境でしたから、選ばれたときは本当にうれしかったです。
アトランタ五輪では。オーさん(萩原美樹子:当時・ジャパンエナジー)の控えでしたが、オーさんがすごすぎて、自分は代わりにもなっていません。試合にもそんなに長い時間は出ていないので、「五輪を経験できてすごいね」とよく言われますが、自分ではまったくそう思いません。
五輪には、あのタイミングでないと出られなかったと思います。出場できたことはうれしかったですけど、仕事はできませんでした。ワンポイントでリバウンドを取ったり、ルーズボールを取ったり。「タフな全日本」があのころの身上でしたから、みんなでディフェンスを頑張ることだけしかできなかった。活躍したり、目立った覚えもありません。
よく「しぶといゴール下」とか「玄人受けするプレイヤー」と専門誌で書かれました。自分自身でも万人受けしないのはわかっていましたし、目立たなくてもそこは負けたくなかったので、そうしたところを評価されたのはありがたかったし、自分のプレイをよく見ていてもらえているなと思える表現でした。
アトランタ五輪の思い出はカナダ戦
日本の奮闘に、大観衆が応援してくれた!
オリンピックで印象に残っているのは予選リーグの5戦目、最終戦のカナダ戦です。その後の準々決勝でのアメリカとの対戦はもう夢物語で、あのメンバーとやれたことはうれしかったですが、現実的にはベスト8、決勝トーナメントに進めるかどうかがかかったカナダ戦が一番インパクトが強かったです。予選リーグの中国もカナダもとにかく相手が大きかったけど勝てました。中国戦は75-72の僅差で、カナダ戦は95-85でした。95点というハイスコアが示すとおり、カナダとの一戦は、みんなのシュートが神がかっていました。今で言う“ゾーンに入っているかのよう”に、日本チームが打つシュートが見事に決まったのです。そのシュートのお陰で劣勢だった展開を逆転。最初は隣国のカナダを応援していたアリーナの空気が変わりました。
カナダが崩れて日本の流れがよくなったころから、次第に観客が日本の応援をしはじめたんです。オーさん(萩原選手)もミチさん(村上睦子選手)も、とにかくいいところでシュートが決まり、日本ベンチはギャーギャー叫んでいました。試合が終わった瞬間、会場のモアハウスカレッジのスタンドにいた全員が総立ちとなってスタンディングオーベイションをしてくれ、日本の頑張りを称えてくれました。その光景には、大感動でした。
アメリカにとって、カナダは隣国。そのカナダではなく、私たち日本をこんなにも称えてくれているんだ。さすがはバスケットボール発祥の国、みんな“見る目”が肥えていて、いいものはいいというのが人種を超え、国を超えて称えてくれるんだと、観戦していたアメリカのバスケットボールファンの懐の深さに感動してしまいました。そんな会場の雰囲気もですが、あのカナダ戦は、チームの一体感があった試合だったのでよけいに思い出深いです、
オリンピックでは毎日、何らかの感動があります。選手村でクロアチアのクーコッチ選手を発見して大興奮しましたが、ただ試合前で声をかけたり写真を撮るミーハー的なことははばかられました。でも、あの時、声ぐらいかければよかったな(笑)と。ドリームチームの選手とはハイタッチして喜んだりもしました。
※次回のVol.6では、母校・桜花学園高でのコーチ経験、恩師の井上眞一先生の情熱について話していただきます。
取材・文/清水広美
写真協力/山田かがりさん
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