トップアスリートの高校時代 オリンピアン【第5回】 山田かがり (Vol.6 ) 母校と実業団のコーチを経験
オリンピックに出た“レジェンド”たちはいったいどんな高校時代を送ってきたのか、昔を振り返っていただきました。それとともに、高校生プレイヤーへの熱いメッセージも。リレー方式でつないでご紹介します。ミラ(永田睦子さん)から指名されたのは、山田かがりさんがリターパスをキャッチしました。
山田かがり選手は、守山中(愛知)ではチームの全国優勝を8連覇に伸ばし、名古屋短付高校(現・桜花学園高校:愛知)でも名門チームのエースとして活躍。実業団ではシャンソン化粧品と富士通で活躍しました。高校時代からしぶといゴール下プレーとサウスポーを生かしたシュートには定評があり、リバウンドやルーズボール、球際の強さから玄人受けするプレイヤーとして名をはせました。
日本代表としても高校時代に世界選手権メンバーに選出され、アトランタ五輪、バンコクアジア大会に出場を果たしています。コートネームは名前のまま「かがり」。お父さんが命名したように、かつては灯台のかわりとなった篝火(かがりび)。そのあかりのように、周囲を照らし続けた選手です。一線を退いた後は指導者に転身。女子バスケットボール界を引っ張ってきた一人といえます。
現役時代は、球際に強い粘り強いプレーでチームのピンチを再三救った
山田かがり
桜花の井上眞一先生のモチベーションの源とは
母校である桜花学園高の井上(眞一)先生が、今もなお、負けて悔しいという気持ちを持ち続けていることはすごいことだと思います。現役を引退した1年後に桜花のコーチになった時、先生に「指導者としてのモチベーションはどうして続くんですか?」と尋ねたことがあります。
「毎年選手が変わっても、モチベーションを持ち続けることが何十年も続いているのは、バスケットが好きだし、勝ちたいと思う気持ちに変わりはない。何より、選手を勝たせてあげたいと思うからだ」という答えが返ってきました。わが恩師ながら、そのモチベーションの持続と勝ち続けるチームにしていることがすごいなと感服しました。
引退後は自分がコーチになるなんて夢にも思わず、バスケットはもうおなかいっぱいと思っていたので井上先生からコーチに誘っていただいたときは、最初は断りました。でも、シャンソン化粧品のコーチをやっていた鄭周鉉(ジョン・ジュヒョン)理事や奥様の李玉慈(リ・オクジャ)さんから、「あなたは指導者に向いている」と、現役の時から言ってもらっていました。
その年の夏に桜花の臨時コーチをしたことと、それまでコーチを務めていた朴珍京さんがやめることになり、井上先生から誘っていただきました。でも、「先生の下でやれるのはありがたいかもしれないけど、私には無理!」と断ったんです。先生からは「とにかく1回話を聞いてくれ」と言われ、その言葉にのったのが最後でした(笑)。
あとあと考えれば、コーチという新しい仕事をするのに、自分のプレイの基礎となった母校でスタートを切れるのは誰もができることではないかなと思い直しました。
中学、高校、実業団とすべてのカテゴリーで優勝を経験。シャンソンでは黄金時代に大きく貢献した
桜花では3年間、選手と井上先生とのパイプ役としていろんな意味で勉強になったし、勝つためには何をしなきゃいけないのかを教わりました。その後、ご縁があって山形銀行(以下、山銀)で3年、さらにアイシンAWではヘッドコーチ、コーチとして4年間と、計10年間、コーチングに携わりました。
コーチ時代は、選手生活とは全然違いました。選手のほうが楽でしたし、教えることは難しいと痛感しました。山銀では、自分が主でやらなきゃいけないし、コーチがいなかったのでヘッドコーチ兼アシスタントコーチでした。注意したり、なだめたり。山銀の選手たちは素直な子が多く、頑張ったらなんとかなるというモチベーションでついてきてくれて、全日本実業団競技大会、全日本社会人選手権大会、全日本実業団選手権大会とそれぞれ初優勝することができ、3冠に導くという思わぬ結果も得られました。
アイシンAWの時がコーチとしては一番大変で、思うように行かなかったですね。練習でやってきたことを試合に出すのが難しかった4年間でした。なかなか思うようになりませんでした。人に伝えるって難しいと感じました。でも、桜花学園高校、山形銀行、アイシンAWと、3チームともに違うカテゴリーでできたのはすごくありがたいことでした。
取材・文/清水広美
写真提供/山田かがりさん
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