2017/08/11

宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS  【第3回】 テーブス海が挑んだAAU大会<Vol.1>

アメリカで活躍するLA在住のスポーツライター宮地陽子さんによるコラム「宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS」。
高校生世代やバスケ大好きな人のための最新USAバスケ情報満載で届けします。

第3回目は、マサチューセッツ州のノースフィールド・マウント・ハーモン高校に留学中のテーブス海選手へのインタビューです。
日本の高校に2年夏まで在籍し、その後、アメリカの高校に留学したテーブス選手。すでにいくつかのNCAAディビジョンⅠチームから奨学金のオファーを受けていると言います。この夏は、ラスベガスで開催されたAAU大会に出場しました。
このAAU大会とは何か。この大会に出る意味はどんなところにあるのか。大会を通して、自身の大学選択をどのように考えているかなどを聞きました。インタビューは3回にわたってお届けします。


ラスベガスで開催されたAAU大会でプレーする#15テーブス海選手

 

AAU大会とは何か

 それは、ちょっとした騒動だった。7月末にラスベガスで行われたアディダス主催のAAU大会、『アディダス・アップライジング』で、全米中から注目されている2人の高校生選手、ラメロ・ボール(今年ロサンゼルス・レイカーズにドラフト2位指名されたロンゾ・ボールの15歳の弟)のチームとザイオン・ウィリアムソン(17歳。来年高校卒業する選手の中ではトップクラスの有望選手)のチームが初対戦。インターネット上では数日前から話題となり、当日は会場に人があふれて警察によって入場制限が行われたほどだった。試合のインターネット中継をライブで見た人は約82万人にも上り、その後、ディレイで見た人も入れると再生回数は136万回を記録している(8月10日時点)。

 その同じ大会に出ていた日本人選手がいる。2年前からアメリカに留学しているテーブス海(現・ノースフィールド・マウント・ハーモン高校)だ。当日、同じ会場で試合をしていたテーブスに、ラメロ対ザイオンの試合について聞くと、冗談混じりに「僕も日本ではけっこう有名だと思ったのだけれど、でも、あれはとんでもなかったです。まったくクレイジーでした」と笑った。


春から夏にかけて開催されるAAU大会。7月末、集大成の場として開催地となったのはラスベガスだった。これは『アディダス・アップライジング』メイン会場のキャッシュマンセンター

会場に掲げられた『アディダス・アップライジング』のフラッグ

 「ラメロはこの大会まで見たことがなかったけれど、とても才能ある選手だと思います。まだ若いけれど。ザイオンはアディダスの選手なので(※)、夏の間のどの大会でもいっしょで、一番人が集まっているコートには必ず彼がいました。ああやってザイオンとラメロがいて注目されたことは、大会にとっては間違いなくいいこと。僕にとっても、日本人の人たちに同じ大会でやっているということをわかってもらえて、AAUのことも知ってもらうことができたのでよかった」

   (※)AAUチームの多くは、AAU大会を主催しているいくつかのシューズメーカーの一つと提携し、提携外の大会に出ることはほとんどない。

 確かにAAUといっても、日本ではアメリカのバスケットボール事情に詳しい人以外は何のことかわからないのではないだろうか。AAUというのは「アマチュア・アスレティック・ユニオン」という、いくつものアマチュアスポーツを統括する団体の略称だ。歴史は長く、時代によって影響力やあり方は変わってきているが、現在、AAUバスケットボールといえば、主に春から夏のオフシーズンに活動するクラブチームとその大会のことを指す。

NCAAのコーチたちによる査定の場

 スポーツに季節制が浸透しているアメリカでは、バスケットボールは基本的に冬のスポーツ。高校のチームもプロや大学と同じように、シーズンは秋から始まり、春には終わる。そして、年間を通してバスケットボールに専念したい選手にとって、学校のシーズンオフの間である春から夏を埋めるのに大きな役割を担うようになってきたのがAAUだ。選手たちは学校チームとは別のAAUチームに所属し、それぞれのチームは各大手シューズメーカーがスポンサーとなって全米各地で開かれる大会に出場する。そして、その大会をNCAAのコーチたちが新選手獲得の査定のために見に来る。

 大会の一番の目的は、各選手がNCAAコーチにアピールすることなので、NCAAが定めるライブピリオド(コーチたちが選手査定のために試合を見ることができる期間)に合わせて開催されている。ラスベガスで行われるのは、AAUシーズンの締めくくり、集大成の大会だ。


NCAAのコーチ陣は専用の席で自分たちのチームに迎え入れるにふさわしい選手かどうか、各プレーヤーをシビアな目で査定する

テーブス海選手インタビュー<その1>

昨年夏、今年の夏と挑んだAAU大会

 テーブスは、去年夏から米東海岸のニューイングランド地区を拠点とする強豪AAUチーム、ニューイングランド・プレイヤーズに所属して活動している。今年がAAU2年目。去年はU18日本代表候補にも選ばれ、ドイツ遠征にも行っているが、結局、AAUでの活動を選択した。NCAAディビジョンⅠの大学に進学するためには、NCAAコーチたちの前で試合をする機会の多いAAUでの活動が重要だと考えたからだ。

 なぜ、AAUがそこまで重要なのか、高校でのバスケットボールと比べてどんな違いがあるのか、テーブスにふた夏の経験を聞いてみた。

――今年がAAU2年目の夏ですよね?

 「はい、今年が2年目です」

──多くのAAUチームの中で、どうやって所属するチームを選んだのですか?

 「今所属しているニューイングランド・プレイヤーズはノースフィールド・マウントハーモン(現在所属するマサチューセッツ州のプレップスクール。以下NMHと表記)との繋がりがあって、多くの選手がNMHの選手なのです。(去年夏に)NMHに転校したときに、コーチがこのチームに入れるように手配してくれました。強くて、すばらしいコーチがいるチーム。ヘッドコーチ(ジョン・キャロル)は以前、ボストン・セルティックスでコーチしていた人なんです。AAU界においてトップコーチの一人と評価されている人です」

──チームに入るためにはトライアウトがあったのですか?

 「公式なトライアウトはないけれど、試合に呼ばれてプレーして、もしだめだと思われたらすぐにカットされます。そうやってAAUチームをあちこち変わるのはよくあることなんです。このチームは強いチームで、勝つためには選手もすぐにカットします。そういうチームに2年間残ることができたのは、とても好運でした」


テーブスは、高校チームのオフの間、昨年夏から強豪AAUチームである「ニューイングランド・プレイヤーズ」に所属しプレーしている

――去年、このチームに参加したときに、AAUについて知っていましたか?

 「知ってはいましたが、実際にどういうものなのか、詳しくは知りませんでした。僕にとっても新しい経験でした」

──AAUシーズンについて、簡単に話してもらえますか? 夏の間中、各都市を回って試合をするわけですよね?

 「まずライブピリオド(NCAAのコーチたちが試合を見ることができる期間)が大きく分けて3回あります。AAUのシーズンは学校のシーズンが3月に終わった直後の4月から始まります。まずはボストンなど地元の大会に出て、それほど強くないチームを相手に試合をしました。まだライブピリオドの前で、大学コーチたちが見に来られない時期なので、練習試合のようなものです。

 その後、僕らは4月にダラス行き、5月にアトランタに行きました。7月になって夏のライブピリオドが始まり、それまで以上に競争が激しくなりました。7月に行われたサウスカロライナでの大会にはどのチームでも出られたわけではないんです。アディダスの(AAU)チームは60あるけれど、サウスカロライナに選ばれて出場できたのは30チームだけ。ラスベガス大会はさらに絞られて、僕らのチームが参加していたトーナメント、クリエイターズカップに参加できたのは、サウスカロライナの大会で上位8位までに入ったチームだけでした。僕らはサウスカロライナで3位になって出場しました」

──1回の大会で、だいたい何試合ぐらいやるのですか?

 「たとえば、アトランタでは4日間の大会で、1日2試合ずつ戦いました。大会の最初のうちはプール(グループ)内での試合。どのチームも一つの大会で最低4試合は戦うことになっていますが、後半は負けたら終わりのトーナメント。幸い僕らはどのトーナメントでも最後の日まで戦うことができました。ローカルの大会では試合数の制限もないので、1日4試合やったこともあります。

 日本にいた時はインターハイでも1日1試合だったので、こっちに来て、僕はそういうスケジュールにも慣れる必要がありました。それだけ多くの試合を戦うと、1試合1試合はそこまで重要ではないと思えるかもしれないけれど、実際には負けたら終わりだから、とても重要なんです」

──しかも、大学コーチに見られている中での試合ですよね。

 「それも慣れなくてはいけなかったことのひとつです。チームのために試合に勝とうとすることも大事なのだけれど、それと大学コーチに対して自分ができることを見せることのバランスを取らなくてはいけないので。正直なところ、去年は大学コーチが毎試合見ているということを意識しすぎてしまいました。でも2年目になって慣れてきて、今では大学コーチのことはほとんど目に入らなくなりました。とにかくできる限りアグレッシブにプレーするようにしています。そうすることで、チームの勝利にも貢献できて、大学コーチにも自分ができることを見せられると思っています」

NCAAのコーチ陣の目が光るAAU大会でプレーするのは、大きなプレッシャーだが、自分をアピールする絶好の機会となる

取材・文・写真/宮地陽子

◆テーブス海<Kai TOEWS>プロフィール

1998年9月17日、兵庫県生まれ。
カナダ人の父と日本人の母の下に生まれ、
バスケの名門・東洋大学京北高校(東京)に入学。1、2年とインターハイに出場した。
2013年にU15日本代表選手、2016年にはU18 日本代表候補にも選出された。
2015年夏に単身渡米、メイン州のブリッジトン・アカデミー校で活躍し、2016年にマサチューセッツ州の強豪プレップスクール、ノースフィールド・マウント・ハーモン校に転校。
2016-17シーズンは全米準優勝を遂げる。
テーブスはスピードにあふれたポイントガードで、得点力も兼備。
父は富士通レッドウェーブHC(Wリーグ)、サンロッカーズ渋谷HC(B.LEAGUE)を経て、2017-18シーズンは富山グラウジーズ(B.LEAGUE)のアシスタントコーチを務める。
身長186㎝、体重85㎏。


◆次回Vol.2では、「AAUシーズンで学んだこと」について語ってもらいます。(8月12日掲載)

◆ADIDAS UPRISING(アディダス・アップライジング)公式サイト

【宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS:バックナンバー】

◆【第2回】 NBAでプレーするモーリス・ンドゥウール<Vol.1>

◆【第1回】 「プレップスクール」とは
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