2017/02/20

宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS  【第2回】 NBAでプレーするモリース・ンドゥウール Vol.3 バスケットを楽しむ大切さ

アメリカで活躍するLA在住のスポーツライター宮地陽子さんによるコラム「宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS」
高校生世代やバスケ大好きな人のための最新USAバスケ情報満載で届します。
海外に挑戦する日本人バスケットボール選手などもちろんフォーカスします。

NBAのニューヨーク・ニックスでプレーする
モリース・ンドゥウール (岡山学芸館高校出身)

NBAニューヨーク・ニックス2番(以前は55番)、モリース・ンドゥウール(Maurice Daly Ndour)。特徴的なドレッドヘアで、エネルギッシュにプレーする彼はセネガル出身の選手だ。世界最高峰のリーグ、NBAでプレーするようになったンドゥールに、日本での高校時代を振り返ってもらい、NBAプレーヤーの目から見た日本バスケへの思いを聞いた。インタビューの第3弾は、バスケットボールを楽しむことと、ニックスで現在、求められている自分の役割について。

攻守においても、精神面においてもチームを引っ張ったンドゥウール(後列右から2人目)

ハードワークは必要だけど、
バスケを楽しむことはもっと大切なこと

──日本の、特に相手チームの中には、『外国人選手がいるチームはずるい』と言う人たちもいますけれど、そういった声を耳にしたことがありますか?

「聞いた。たくさん聞いた。でも、僕の意見だけれど、所属しているチームのマイナスになることはないと思うし、日本バスケットボール協会にとってもマイナスになることはないと思う。他の選手にとって、いつも慣れた相手ではなく、自分より大きな選手相手に競争することは助けになるはずだからね。

 フェアだとか、フェアでないかというけれど、スポーツだからね。NBAにいたらフェアでないことはよくあることだ。シャキール・オニールのような選手がいて、小さい選手が彼を守るのはフェアではないけれど、でも、それもバスケットボールだ。それが、スポーツの性質だ。すべてがフェアではないんだ」

──まだティーンエイジャーである若いとき、そういった批判のコメントを聞いて傷ついたりもしましたか?

「時々ね。でも、聞き流すだけだった」

──日本の高校バスケットボール界がこれから向上するために、変えたほうがいいと思うことをひとつあげるとしたら何でしょうか?

「間違いなく練習時間は変えたほうがいいことだ。誤解してほしくないのは、僕もハードワークは必要だと思っているということ。でも、筋肉を使いすぎることは必要だとは思わない。週末に朝と夜に4時間ずつの2部練をするのは、ばかげたことだ」

──1日8時間も?

「そうだ、8時間だ。そんな長い時間教わっていても、何も身につくとは思えない。みんなが考えているのは、『きつい』とか、『練習が早く終わらないか』ということばかりだ。だから、提案するとしたら、練習時間を短くして、まるで軍の訓練のようにただ単に何度も走らせたりする代わりに、もっとスキルを教えることだ。すべて厳しくやるから、子供たちは心から楽しんでいない。

アメリカの高校は、みんな楽しんでプレーしている。彼らにとってプレーすることが楽しいんだ。日本ではバスケットボールを楽しんでいないように感じる。コーチにすべての権限があって、何でも指示するようなやり方をしているから、みんな苦しい思いをしている。

 それが日本の文化だということはわかっているつもりだけれど、でも、どんな文化でも変わっていくものだ。変わらずに残しておくものもあるけれど、向上させようとするものだ。そういった面でも向上させることができると思う」

ニューヨーク・ニックスで活躍するンドゥウール選手(写真/ゲッテイイメージズ)

チームを率いる立場から
ロールプレイヤーとしての役割へ

──日本を出てアメリカに来たときに、一番適応する必要があったことは何ですか?

「バスケットボールのフィジカルさだ。アメリカでは、ずっと力強い選手たちを相手にプレーし、バスケットボールがずっと速く、クイックだった。アメリカに来たときは、そういったことに慣れる必要があった。スピードとクイックネスはすでに持っていたから、フィジカル面での激しさに慣れることだった」

──日本ではチームの中心選手で、何でもやらなくてはいけなかったわけですけれど、アメリカでオハイオ大、そしてNBAと進む中で、ロールプレイヤー(限られた役割を与えられた脇役)としての役割をすることになって、その変化にどう適応してきましたか?

「アメリカに来てからも、大学では僕はみんなを率いる立場だった。短大に行ったときはそうだったし、オハイオでも僕はチームのハート&ソウルの存在だった。でも、NBAに入って、バスケットボールをずっとやってきた中で、今、初めてロールプレイヤーになっている。

 簡単なことではない。チームでいつでもボールを持つような立場で、自分が中心になって攻めるプレーばかりだったのが、今では、チームは必要とはしてくれているけれど、限られた理由のために必要とされている。チームに色々なやり方で貢献できるけれど、ボールを手にしてスコアラーとしてプレーするわけではない。

 そのことに慣れること、そして、それを、できるだけポジティブな気持ちでやること。常に前向きに、ハードワークをし、自分の時が来るのを待つこと。シーズンは長いから、何が起きるかわからない。辛抱強く、努力し続け、常に笑顔で、ポジティブでいることだ」

※次回は、アメリカの大学でプレーする渡邊雄太選手と八村塁選手について。

取材・文/宮地陽子
NBA写真/ゲッテイイメージズ
写真協力/岡山学芸館高校


◆モリース・ンドゥウール Maurice Daly Ndour ◆

1992年6月18日、セネガル・ティエス州生まれ。
2008年に来日し、岡山学芸館高校に留学。
2011年に同校を卒業後はNBA入りをめざして渡米。
モンロー・カレッジ(ニューヨーク州)から2013年にオハイオ大に転校。
2015年のNBAドラフトは指名外だったが、2016年7月にニックスと2年間の契約を交わした。
ポジションはスモール・フォワード。
母国・セネガル代表としても2014年から中心選手として活躍している。

<<<著者/宮地陽子さんプロフィール>>>
東京都出身。LA在住。国際基督教大学教養学部卒業後、出版社勤務を経て、87年からシカゴ近郊に住居を移す。翌88年、NBAを中心にスポーツライターとしての活動を始め、以来、雑誌を中心に執筆活動。マイケル・ジョーダンをはじめとするNBAのトップ選手の取材や最近ではアメリカに挑戦する日本人バスケットボール選手の取材にも積極的に取り組んでいる。


シェアはこちらから!!

新着記事

高校バスケ特集企画

トップへ戻る