2016/12/1

宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS 【第1回】 「プレップスクール」とは


アメリカで活躍するLA在住のスポーツライター宮地陽子さんによるコラム「宮地陽子の最新USA高校バスケPRESS」
高校生世代やバスケ大好きな人のための最新USAバスケ情報満載で届します。
海外に挑戦する日本人バスケットボール選手などもちろんフォーカスします。

「プレップスクール」とは

アメリカの高校バスケットボールについて、こんな疑問をもったことはないだろうか。

・アメリカで一番強い高校はどこ?

・アメリカ版インターハイ、アメリカ版ウィンターカップのような大会はあるの?

・ジョージワシントン大入学前の渡邊雄太、今シーズンならテーブス海やシェーファー・アヴィ幸樹、そして歴代スラムダンク奨学生たちが通っているプレップスクールって、高校とはどう違うの?

・アメリカの高校バスケはシーズン制らしいけれど、オフシーズンはみんな何をしているの?

日本の高校とは違うらしいということは知っていても、何がどう違うのか、詳しいことは知らないという人が多いのだろうと思う。

何の情報も入ってこなかった昔に比べると、今ではYouTubeなどで検索すれば、アメリカの高校生選手のハイライト映像も気軽に見られるようになった。試合をフルで見られることもある。でも、それがどんな場面でのプレーなのか、いったいどんな意味を持つ試合なのかがわからないと、その本当の凄さもわかりにくい。

そんな疑問を少しでも解き明かし、アメリカの高校バスケが少しでも身近に感じられるように、そして、いずれはアメリカを目指したいと思うような子供たちが増えるように、アメリカの高校バスケの話を書いていこうと思う。

まず今回は、日本でも存在を知る人が多くなった『プレップスクール』の話。


2009-10 サウスケント・チーム写真(2010年1月)
前列左端:早川ジミー
前列左から3人目:ラス・スミス(現在トルコリーグ所属。元ニューオリンズ・ペリカンズ&メンフィス・グリズリーズ)
後列左から2人目:谷口大智(現秋田ノーザンハピネッツ)
後列4人目(中央):ニック・スタウスカス(現フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)

漫画家の井上雄彦さんが中心になって立ち上げたスラムダンク奨学金が誕生して、間もなく10年になる。2006年12月に設立され、募集が始まったスラムダンク奨学金は、2008年3月に1期生の並里成を送りだして以来、これまでに9人の選手をアメリカのプレップスクール(奨学金設立当初はコネチカット州にあるサウスケント・スクール、今シーズンからは、同じくコネチカット州にあるセント・トーマスモア・スクール)に送りこんできた。そのことによって、日本のバスケ界でも、アメリカにプレップスクールと呼ばれる学校があること、そこのバスケットボールのレベルがかなり高いことが知られるようになった。

どれだけレベルが高いかといえば、たとえば、スラムダンク奨学生たちがサウスケント・スクールでチームメイトだった選手の中には、現在NBAでプレーする選手が複数いる。アイザイア・トーマス(ボストン・セルティックス)、ディオン・ウェイターズ(マイアミ・ヒート)、ニック・スタウスカス(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)、モーリス・ハークレス(ポートランド・トレイルブレイザーズ)といった選手たちだ。チームメイトに将来のNBA選手がいるだけでなく、対戦相手のチームにも、その後、NCAAディビジョンⅠに進んだ選手、中にはNBAに入った選手もいるわけで、間違いなく、アメリカのトップレベルを肌で感じることができる環境だ。

とはいえ、プレップスクールという呼び名が知られるようになっても、実際にプレップスクールがアメリカの学校システムの中でどんな存在なのか、高校とどう違うのかなど、正確なところはあまり知られていない。

そのわかりにくさの理由のひとつに、プレップという言葉が、その状況によって様々な意味合いで使われることがあるかもしれない。たとえば、アメリカの新聞などのスポーツ記事で、"prep basketball"と分類分けされているときは、ほとんどが、大学やプロのバスケットボールに対して、高校バスケットボールの意味なのだ。

一方で、アメリカ国内で特定の学校についてプレップスクールという呼び方をするときは、通常、大学進学を目的とする私立学校のことで、日本に置き換えていうと、私立進学校といったところだろうか。ふつうの高校に比べて、カリキュラムや生徒と教師の割合などを、大学に進むことを目的に組まれている。授業料は決して安くなく、世界中から、裕福な家の子弟が集まってくる。全寮制の学校も多い。その中で、一部の学校が、バスケットボールのプログラムに力を入れ、有望選手をリクルートしている。そうやって有望選手を育てることで、学校の名前を売り、学校としての特徴を作り出すことで、バスケットボール選手だけでなく、他の生徒にとっても魅力的な学校を作ろうとしているわけだ。大きな学校制度のくくりの中でプレップスクールも高校と同じだが、バスケットボールの世界では区別されており、高校のチームとプレップスクールがお互いに対戦することはほとんどない。東海岸では同じようにバスケットボールに力を入れている学校がいくつもあるため、地元でリーグを組んでシーズン中の試合を行うことができるが、近くに似たようなプレップスクールがない場合は、遠くまで遠征して試合をしたり、短大などと練習試合を行ったりする。


(2010年1月
(左から)谷口大智(現秋田ノーザンハピネッツ)、ヴァーネル・ブラックマン(父が元ダラス・マーベリックスのロランド・ブラックマン)、ニック・スタウスカス(現フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)、ラス・スミス(現在トルコリーグ所属。元ニューオリンズ・ペリカンズ&メンフィス・グリズリーズ)

プレップスクールが通常の高校と違うのは、PG(Post graduate)と呼ばれる高校卒業後の学年も設置されていること。この高校卒業のPGという学年が、バスケットボールの有望選手たちにとっては鍵となる。つまり、高校在籍の間にNCAAに進学するだけの成績を取れなかった選手たちは、成績を向上させるために、プレップスクールに1年行くわけだ。

そういった選手にとってのプレップスクール以外の選択肢は、短大に行くか、進学予定の大学でレッドシャツ(練習生)となること。しかし短大に行くと大学のエリジビリティ(プレー資格)の年数を使ってしまい、NCAAでプレーできる年数が減ってしまう。レッドシャツになった場合は、エリジビリティは使わないが、試合には出られず、成績によっては練習にも参加できない。その点、プレップスクールに行けば、エリジビリティは使わず、比較的高いレベルで試合をすることもできる。進学先が決まっていない選手なら、大学のリクルートの目にも留まりやすいと、メリットは多い。ただしプレップスクールの授業料は決して安くなく、家計に余裕があるか、あるいは授業料の免除を受けたり、外部の奨学金を得られるほど有望選手でないと選択できない道でもある。

もちろん、プレップスクールにはPG以外の学年もある。つまり、高校卒業する前でも、プレップスクールに行くことはできる。ただし、高校の段階での1学年の差は大きく、PGの選手たちが集まってくる中では本当に実力がある選手でないと、PGチームに入ることは難しく、入れても試合出場の機会は限られる。


(2010年12月)
矢代雪次郎(現群馬クレインサンダーズ)&モーリス・ハークレス(現ポートランド・トレイルブレイザーズ)

日本人選手では、渡邊雄太や、スラムダンク奨学生たちは日本の高校を卒業してからのPG、日本でインターナショナルスクールを卒業したアヴィ・シェーファー幸樹もPGだったが、京北高校を2年途中で退学して渡米したテーブス海は、去年ジュニア(日本で高校2年)としてブリッジトンに編入し、今年夏に転校した先、ノースフィールド・マウントハーモンでは、一学年を落として再びジュニアの学年に入った。それでも、PGの選手たちに交じって試合に出ているのは、それだけ、テーブスの実力が認められているというわけだ。

※プレップスクールを含む進学の流れについては、スラムダンク奨学金のウェブサイトに詳しいフローチャートが書かれているので、そちらも参考に。

http://slamdunk-sc.shueisha.co.jp/program/flowchart.html

文・写真:宮地陽子

宮地陽子さんプロフィール
東京都出身。LA在住。国際基督教大学教養学部卒業後、出版社勤務を経て、87年からシカゴ近郊に住居を移す。翌88年、NBAを中心にスポーツライターとしての活動を始め、以来、雑誌を中心に執筆活動。マイケル・ジョーダンをはじめとするNBAのトップ選手の取材や最近ではアメリカに挑戦する日本人バスケットボール選手の取材にも積極的に取り組んでいる。


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