2017/08/31

2017インターハイ 【明成】 「原点回帰」、その“覚悟”と新たな挑戦


準決勝とは一転した試合の流れに、自ペースを崩された明成。福大大濠のゾーンの前に苦しい時間帯が続いた

明成のテーマは「原点回帰」、
その“覚悟”と新たな挑戦

 インターハイ決勝はどこか歯車が狂っていた。前日までのプレーが鳴りを潜めた。試合を終えて、選手も、佐藤久夫コーチの敗戦の弁も「自分たちのバスケットができなかった」と、同じだった。

 「明成はディフェンスと走り。新人戦から走ってディフェンスしてずっとやってきた。それがようやく実って出てきたことがいいと思っていました。でも、決勝は自分たちのバスケットができなかった」(#8八村阿蓮)

 「(決勝戦は)先制したけど、気がゆるんだというか。どんどん崩れていき、もっと思い切りやらないといけなかった。上のディフェンスの激しさとか、下のディフェンスの動きもまだまだ。緊張はあったけど、やるしかないという気持ちしかなかった。大濠は1回戦から戦ってきて、接戦も多く勢いできた。自分たちが足りなかった部分が見つかりました」(#10田中裕也)

 佐藤コーチは、さらに無念さを吐露した。
 「やらせてもらえなかった。逆の立場、挑戦する立場でやらなきゃいけないんだけどね。相手の好きなことをやらせないバスケットをしなくてはいけない。それが機能しなかった。奴らなりに慎重になりすぎたんじゃないの。『いけいけ!』と言ったけど、ブレーキをかけていた。これからはガードを育てる。機転がきかなかった。ガードがもうちょっとゲーム作りができれば。桜花(学園)みたいなガード(#4山本麻衣)がほしい。今時のガードはゲーム作りができない。自分も攻めていい調子でやっていればいいんだけど、苦しい時にこいつを使うぞという、そういうのが見て取れなかった。悔しいね。悔しいし、指導力のなさに腹が立つ。複雑な気持ちだね」


決勝ではなかなか#8八村阿蓮にボールが回ってこなかった。「ああいう試合は二度としたくない」と八村

 大会の組み合わせは、強豪校がひしめく“死のブロック”だった。しかも、初戦の小林戦(宮崎)から厳しい戦いを強いられた。世間の下馬評は当初は低かったが、大会に入ってから明成は一戦ごとに成長し、その評価は次第に高くなった。

 「初戦(小林戦)で負けるかなという危険性もあったし、土浦日大戦(茨城)でやっつけられるのかなという思いもあった。飛龍(静岡)の時は1点、2点でも勝てればという気持ちでいた。そして福岡第一(福岡)。このインターハイはやってみなきゃわからなかった。そういうチームが決勝まで勝ち上がったということは、評価しなきゃいけない。その上でチーム改革をして、恥ずかしくないガードを育てたい。ディフェンスも中途半端。やっていくのが怖くなる。チームをもう一回作り直して12月に臨みたいと思う」
 指揮官は、冬に向かっての出直しを表明した。

 インターハイの期間中、佐藤コーチは仙台の自宅から大会会場である体育館まで毎日車で通っていた。車で2時間あまり。チームの宿舎に泊まらず自宅から通ったのは、願をかけてのこと。さらにユニフォームも今年新調したものではなく、古いタイプのものを今大会は着用させていた。チームにとってのテーマは“原点回帰”。初心に戻って戦うことを意味していた。「優勝してこのユニフォームに星をつけたいな」と、もらしていた。

 決勝戦はなかなか自分たちのペースにならなかった。歯車の狂いは、ラストシーンに象徴される。プレスでミスを誘って生まれたチャンス。この土壇場で、5人の思いがちぐはぐになってしまったのだ。残り8.9秒からのスローイン。ベンチからの指示は#8八村のスリーポイントだった。シューター#10田中にはディフェンスが3人寄っていた。#12本間紗斗が田中にスクリーンをかけに行き、振り向いた瞬間「アレックス(#6相原アレキサンダー学)がドライブしていて、アッと思った」と言う本間。八村は「アレックスが行ってしまった」と茫然としていた。当のキャプテン#6相原は、「自分がボールを持った時に、#5塚本(舞生)から『お前がやれ』と言われ、自分がやらなきゃと思った。無理やりでも行かなきゃと思った」と振り返る。

 そのドライブからのショットがこぼれ落ち、相原自らが拾ってセカンドショットをねじこんだ。これがバスカンになる。明成ベンチが息を吹き返して歓声に包まれる。残り時間は2.0秒。入れれば同点となる場面だった。だが、このラストのフリースローは無情にもリングの根元に弾かれてしまう。勝負は1点差で決した。廊下でも、控え室でも涙があふれていた。

 翌日、明成の体育館である明仙ラボでは1、2年は練習を行い、3年は佐藤コーチから「決勝に行けたことで満足していたんではないか、敗れた意味を考えろ」と問われ、長いミーティングを行ったと言う。

「決勝で力を出せなかったら練習でやってきたことは意味がない。手を抜いているわけではないけど、無意識の手抜きをしているかもしれない。どうやってチームに貢献するかを一人ひとり練習ではなく、ミーティングをして考えました」とアレックスは語る。

佐藤コーチから念を押されるように指示を受ける#6相原。「初戦から自分の力が出せず、悔しい大会になった」と話す

 インターハイが終わって1週間あまり。この時期、明仙ラボでは台湾の強豪・松山中高も参加する招待試合「クローバーブッシュキャンプ」を開催している。キャンプでは3年は2年に、2年は1年に指導する場面が多かった。これもチーム貢献の一つだ。そのキャンプで改めて佐藤コーチにチーム状況を聞いた。 

 「気持ちが切り替えられてないんですよ、負けたということが残っているからね。簡単に切り変えられたらそんな簡単なもんだったのか、と腹が立つし。かといって、いつまでもグズグズしているようでは弱虫だ。今は下級生を育てるのが一番。国体でも明成の選手にはちゃんとやってもらいたい。今の子供たちというのは、叱られることに弱い。叱られるとすべてがダメになる。それでも、将来につながっていく選手は叱られながらも底力をつけていく」  冬に向けて期待している選手を尋ねると、佐藤コーチは「アレックス(相原)」と即答した。本人は「ずっと期待されながら、自分は負けたり、試合を無駄にして、それでも伸びてきていたので、これからは勝つことで自信をつけ、先生の期待に応えられるようにしたい」と話す。 

3ポイント、リバウンドに奮闘した#12本間。「負けた実感が全然なく、閉会式の後、大濠を見て初めて負けたんだなと。すごく悔しかったです」

 八村について佐藤コーチは「ウインターカップまでに3番、4番、5番をやらせる。プレーも作らなくてはいけない」と話し、インサイドだけでなく、オールラウンダーとして育てていく方針だと言う。八村自身、「自分が留学生相手でも得点を取れるようにならないと、当たった時に状況が苦しくなってしまう。責任ある立場」と、自らのさらなる課題に気持ちを新たにしていた。

 加えて、インターハイで力不足を指摘されたガード陣も、層は厚い。チーム内でのライバル競争がさらに厳しくなりそうだ。時には佐藤コーチから辛辣な言葉も浴びせられることもあるだろう。
「それがあるからこそ歴代の先輩たちも成長してきたと思う。逃げずに立ち向かっていきたい。絶対に食らいついていきたい」
 #5塚本のこの言葉は、チーム全員の“覚悟”を代弁していているようだった。

 「一度優勝したチームの目標は、ベスト4とかベスト8とか狙うもんじゃない。あってはならないことだ」と話す佐藤コーチ。
 冬の戦いへの火ぶたは、すでに切られている。

取材・文/清水広美
写真/一柳英男
写真/若生悠貴



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