2017/09/1

2017インターハイ 【福大大濠】  優勝への軌跡、いくつもの山場を乗り越えた

「1-3-1ゾーンは一昨年から練習してきた守り。3年間の積み重ねを発揮できた」と話す#15井上宗一郎

福大大濠、優勝への軌跡。
チームでいくつもの山場を乗り越えた

 決勝直後、片峯聡太コーチの優勝インタビューに福島の観客から万雷の拍手が贈られた。
 「ゲーム前に2つのことを選手に伝えました。1つ目は大濠のプライドにかけて、何が何でも勝ちに行こうと。そして『3.11』。この被害に遇われた方々に勇気と希望、そして感動を与えるようなゲームを必ず展開しようと、選手には話しました。福島の方のおかげで優勝させていただきました。本当に感謝しています。ありがとうございます。(試合前に選手に伝えたことは)最後の最後でお前たちの力を見せる時が来た。それは今まで培ってきた練習の賜物。選手に助けられ、選手が頑張って優勝を勝ち取れたと思います」

 今大会、福大大濠は相手のツボを抑えることで、いくつも山場を乗り越えてきた。まず、2年連続で初戦敗退を喫していたため注目を集めた実践学園戦(東京)を、無事にクリアした。

 「3年の存在と、U19(U19ワールドカップ:エジプト)から2年の中田(嵩基)が戻ってきて安心して戦術が組めた。去年は恥ずかしい話、ディフェンスも崩壊していた。今日は入りが固かったけど、ディフェンスは持ちこたえ、練習をやってきたことが垣間見えた。40分間、いかに自分たちに波を引き寄せられるかだった。努力してきたチームが勝つんだぞ、と言ってきた。インターハイですから試合を追うごとに勢いに乗っていきたい。実践も最後はプライドを懸けてやってきた。それが高校生。戦略戦術うんぬんより以前の戦いがある。それがあるから高校生の試合は面白いんだと思います」
 この2年、“鬼門”となった初戦を勝ち上がった片峯コーチは、「この後もぬかりなく戦いたい」という言葉を口にした。

マッチアップする相手が留学生が多いインサイドの選手たちは、太ももの裏に疲労が蓄積していた

 3回戦からは留学生がいるチームとの3連戦となった。東山戦(京都)は、ガード陣がセンターへのパスの出所をシャットアウト。#9カロンジ・カボンゴ・パトリックへの裏パスをよく抑えた。中部大第一(愛知)戦では、#5上塚亮河が中部大第一のポイントゲッター#5坂本聖芽を死にものぐるいで抑えた。帝京長岡(新潟)戦は、#4永野聖汰が相手のポイントガード#8祝俊成を封じ、得意なプレーをやらせなかった。大会を乗り切るには5人だけでは戦えない。特に留学生を率いるチームに対抗するインサイドは、200㎝の#15井上宗一郎しかいなかった。
 「センター以外の違うところでいかに圧をかけていけるか、外周りの選手層がうちにあったのは大きな優勝の要因」と話す片峯コーチだ。

 6月の九州大会で敗れたことでシードを取れなかったため、1回戦から6試合を戦える選手層がなければ、「(決勝のスコアは)50対100になっていたかも。選手層の厚みがあったおかげで、決勝を戦えた。彼らの心がつかめていた」と、片峯コーチは振り返る。

 懸念は疲労だった。帝京長岡との準決勝は4回もの延長戦にもつれこんだので、1.5試合を戦ったことになる。福大大濠のトレーナーとしてチームを15年間見続けている松本考司トレーナーがそのあたりのチーム事情を明かしてくれた。

 「3回戦の東山戦の後から疲れが出ていました。お風呂に入り食事をとった後、選手間のミーティングを8時か9時まで行う。並行して試合に出ている9人は高周波の機器を2台使って治療とストレッチ、マッサージを行いました。試合が長引いた準決勝の後は、時間も遅かったので身体のケアを11時までには終わるようにしました。#13中田はストレッチとマッサージを30分くらい。当然ですが、全身疲労が感じられました。#15井上と#8中崎圭斗は留学生とのマッチアップで太ももの裏にはりがあった。#14横地をはじめ帝京長岡戦で身体のぶつかりあいで打撲を起こしている選手が数名いて、疲労が濃いのがわかりました」

 「でも、決勝戦の朝は、不思議とみんなに気負いがなかった。決勝前のミーティングでも永野を皮切りに3年間の思いを一人ずつゆっくり話していきました。留学生と対戦した3連戦の時と比べ、すごく落ち着いていました。15年ほどチームに関わっていますが、3年前に優勝した津山(尚大:現・琉球ゴールデンキングス)たちの代と同じような雰囲気が今回の決勝にもありました」

決勝はどんなに競っていても焦りはなく、「まだ大丈夫」という余裕があった。死闘となった準決勝を勝ち上がったからこそ吹っ切れていたのかもしれない。ハドルで共通意識を高める

 それまでの試合では、気負いが先に出ていた。決勝では、#13中田だけはいつも通り「やらなきゃいけない」モードが身体から発散されていたと言うが、それ以外の選手は意外にもこれまでにないリラックスした表情だったと話す。それがストレートに試合にも出た。どんなに競った場面でも「まだ大丈夫という(何かを)乗り越えた感があったように感じる」と、松本トレーナーは言う。

 「決勝に進めたということは、すなわちウインターカップ出場が決まったということ。それにホッとした部分もありました。あと1勝はもちろん勝つけど、それ以上に楽しもうと永野キャプテンが言っていたことで、みんな肩の力が抜けていました」
 決勝という大舞台にもかかわらず、肩の力が抜け、いい意味でリラックスしていた理由を#12土家大輝はそう話す。

 大会期間中、朝練にはベンチ入りしていないメンバーも体育館に集まった。
 「朝練習に応援団も呼んで、みんなで士気を高めました。留学生のいるチームに向かっていくことが僕らの大事な戦い方だということを確認して試合に臨みました」と片峯コーチ。
 チーム全員で、ベクトルが同じ方向に向かっていった。

 さらに、片峯コーチも#13中田も一様に口をそろえたのは、2年の#10山本草大(そうた)の存在だ。主力として試合に出ている選手ではない。だが、ベンチでは片峯コーチよりも早くコートの5人に声をかけ、アップの時からその存在感は誰よりも大きかった。

 「声を出すことで、それが戦力になると思っています。日頃から選手の顔色とか調子を一歩引いて見ていて、チームの雰囲気が緩いなと思ったら、キャプテンとマネジャーに声をかけ、『ここは締めていこう!』とハッパをかける時があります。時には先頭に立ってバカをやったりもする。試合になれば、自分がチームの雰囲気を一番気づけると思っているので、そこはどんどん発信していきました。シュートを決めることよりもそのほうが感動を与えられるし、力になることもわかっているから。いつも選手の士気を鼓舞し続ける気持ちで声を出しています」と話す山本。

  「自分は試合に出ることは少ないけれど、頑張って頑張ってやっとユニフォームをもらえた。その一方で、ユニフォームをもらえないで悔しい気持ちでいる部員もいる。そういう部員たちの気持ちも一番わかっているという自負もある。逆に、その悔しさを忘れかけているメンバーがいれば、厳しく注意もします。温かく、かつ厳しく、チーム内で自分が果たすべき仕事をやっていこうといつも思っています」(山本)
  こういう選手がいると、チームは心強い。

ゲームを見守る片峯コーチとベンチメンバー。コートで戦う5人と心を一つにしていた。後方のグリーンのビブスを着用しているのが松本トレーナー

 福大大濠にとってインターハイ優勝は今年で4回目だ。片峯コーチは、すでにチームの進むべき道のその先を見据えていた。

 「この2年間は、選手たちをメインコートに連れてこられなかった。でも、今年、ようやく優勝することができた。これからは“勝って兜(かぶと)の緒(お)を締めよ”ではないですが、1、2年がこれを見て、『先輩たちは凄い!』ではなくて、『俺たちもやらなきゃ』、『いや、俺たちも先輩たちのようにやりたい!』とならなくては。そうでないと、来年も戦えるチームになりませんから」

 コートに出る選手だけが、チームではない。陰になり日向になりチームの勝利に向かって努力し続ける選手たちが大勢いる。そんな選手たちをサポートするスタッフを含めて「福岡大附大濠トロージャンズ」なのだ。優勝までの道のりは、決して盤石ではなかった。冬に向けて、もう一度、足元を見つめていく必要性もある。決勝でシュートが入らなかった司令塔の中田は、優勝した翌日にはもう、体育館でシューティングに励んでいた。

 高校生のシーズンは、これからが本番だ。福大大濠の「日本一」への挑戦が、再び始まっている。



取材・文/清水広美
写真/一柳英男
写真/若生悠貴

優勝を決めて喜びを爆発させる#8中崎圭斗、#15井上宗一郎、#12土家大輝

ベンチメンバーの後方には、エントリー外のメンバーが鉢巻きをして父兄らとともに応援団としてチームを後押ししていた


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