2018/08/7

インターハイ2018【明成】『10番』を3年間背負う田中裕也の一途な思い

◆8/6 男子準決勝 開志国際 95-75 明成

 準決勝・開志国際戦の試合終了を告げるブザーが鳴る。コートに立っていた明成のメンバーで、ただ一人田中裕也だけががっくりと膝に手をついた。悔しさはひとしおだ。

 昨年のウインターカップ優勝時のスターターであり、1年から明成のシューターを務め、エースナンバー『10番』を背負ってきた選手。得意の3Pシュートのみならず、その負けん気の強さで身長179㎝ながら大型センターたちとリバウンドを張り合い、時にはゴール下をもねじ込んでくる。そんな責任感あふれるエースからは敗れて悔しい思いが人一倍伝わってきた。

昨年の日本一を経験した選手だが、ここまで順調にきたわけではない。新チームに切り替わった直後の県新人戦の準決勝ではアクシデントに見舞われた。両手を差し出してルーズボールにダイブした瞬間、バキバキバキッと音を立てて手の甲を骨折してしまったのだ。それでも佐藤久夫コーチは決勝のラスト数秒間のみ、ボールに触れない条件で田中をコートに送り、5人しかいない新3年生をコートに立たせ、優勝の時を迎えさせた。「経験の浅いこのチームを最上級生が引っ張るんだ」。指揮官が5人に込めたメッセージである。

 田中が完全復帰したのは5月の能代カップだが、それでもまだ復活の兆し程度の出来栄え。インターハイのシード権がかかった東北大会で完全復活の活躍を見せた。会場となった一関市にあるUドームは、全中で得点王となったゲンのいい体育館だったのも不思議な縁のように感じる。

 そして迎えた今大会はチームを引っ張ったものの、田中らしい鉈でズバッと切り裂くような、全身のバネを生かした3ポイントの数は少なかった。それでも、観客は田中にボールが回ると期待をした。

 田中とキャプテンの古川空音は青森の津軽中の同級生で、津軽中から初めて明成に進んだ選手だ。「佐藤久夫先生の下でバスケットを学び、このチームで日本一になりたい」という田中の一途な思いが明成の進学を決意させた。一見、クールに見える田中だが、佐藤コーチに叱られても立ち向かう大胆不敵さがある。3年になってからはポイントガードを経験するシーンも増え、同時にNBA級の遠いラインからの3ポイントを打たせる練習もしている。すべては、将来を見据えてのことだ。そうしてインターハイの時を迎えたのだが、現時点では総合力の面で開志国際には及ばなかった。

「自分たちの目標は日本一だったので、ベスト4で満足しているわけではないです。今日の負けを練習で克服していきたい」

 田中の目尻が赤くなり、汗とともに涙がにじむ。今年の明成は、即戦力と目される1年生が注目を集めているが、佐藤コーチのバスケを誰より知るのはやはり3年生たちだ。

「自分がもっとしっかりして引っ張っていかないと、チームが成長できない。冬には先生を頼らずに自分たちでバスケットを作っていけるようになりたい」

 どこまでも一途な思いでバスケットに取り組む。そんなエースの熱い思いが、敗れてなお、3年生を中心に心を一つにして、ウインターカップに向けてチームを突き動かすに違いない。

文・写真/編集部


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