2018/12/30

ウインターカップ2018【明成】日本一からの1年。「勝利」と「育成」を目指してたどり着いたメインコート。

前年度ウインターカップ王者の明成が準々決勝で帝京長岡に60-69で敗れ、コートを去った。

197㎝で体格のいい留学生、#14ケイタ カンディオウラに爆発力を見せつけられたばかりか、高さを警戒するあまりにノーマークになった外角から3ポイントを決められてしまい、オフェンスでもタフショットを打たされてしまったことが敗因だった。今大会は準々決勝まではマンツーマンで戦い、帝京長岡戦では留学生対策のために数種類のゾーンディフェンスを出したが、司令塔#8神田龍一に破られてファウルが込んでしまったことも波に乗れない一因だった。昨年、優勝の瞬間をコートで味わったエース#10田中裕也は厳しいマークにあいながらも22得点、5スティールの活躍を見せたが「自分たちガード陣が向こうのガードを抑えていれば、留学生を使うプレーはもっと少なかった」と敗因を述べ、「日本一を獲って久夫先生に恩返しがしたかったし、後輩に受け継いでいきたかったので本当に悔しいです」と目を真っ赤にして語った。


昨年度の優勝校。チーム編成がガラリと変わる中、総戦力でメインコートにたどりついた明成

明成にとっては5度目の日本一の歓喜を迎えたあと、チーム作りの難しさに直面した1年だった。

創部14年目ながらすでに5回のウインターカップ優勝を誇る明成は、いまや全国屈指の強豪校になった。だが、毎年選手が変わりゆく高校界の中で常勝することは難しい。ましてや、明成が目指しているのは選手たちの考えで表現するフリーランスオフェンスとゲームの流れを読む粘り強いディフェンス。これらを実行するには「相手を崩して攻防する『バスケットボールの原理原則』を学ぶこと」(佐藤久夫コーチ)が求められ、指導にも習得にも時間を要する。こうした緻密な指導のもと、選手の心技体が伴ったときの明成は個人技と組織プレーが融合するチームへと成長する。だからこそ明成は3年間の総決算である冬にめっぽう強いのである。


得意の3ポイントのみならず、状況判断からの1対1、2点の取り方が上手くなったエース田中

しかし、今年は日本一メンバーがごっそりと抜け、選手層でも高さの面でも、1年生の助けを借りなければならない年となった。新チーム始動時に#10田中は「今年は経験も高さもないので危機感でいっぱいですが、僕たち上級生が引っ張っていきます」と覚悟の年になることを痛感していた。

明成の足りないポジションであるインサイドを担ったのは期待のルーキー#6越田大翔、#9加藤陸、#11浅原紳介ら190㎝トリオだったが、そこはやはり1年生。ひとっ飛びに成長する魔法の薬など存在するわけもなく、もがき続けた1年を送る。ウインターカップに入ってもすべてが育成の場となり、2、3回戦では多くの下級生に経験を積ませている。しかも試合が決してからではなく、「真剣勝負こそがいちばん成長させる」(佐藤コーチ)とばかりに、試合の中盤にベンチメンバーを次々に投入する冒険を試みている。下級生たちのミスによってみるみる点差が詰められていき、黄信号が灯る寸前まで公式戦のコートに立たせる勇気ある采配はなかなかできるものではない。一方で点差が縮まったあとに、再び点差を広げた上級生の攻防からは確実な進歩のあとも見えていた。このように、今季のチーム作りは「忍」の一文字。我慢に我慢を重ねて育成をしながら、同時に勝利を目指した1年だったのだ。

そうしてメインコートの場までたどりついたが、1年生の経験値とフィジカルでは3年生の留学生を抑え込むには力及ばずで、佐藤コーチはその様子を「半熟卵」「お化け屋敷で怖がっている状態」と表現した。ルーキーがインサイドを担った明成に比べ、やるべきことを一貫した帝京長岡は粘り強かった。

それでも、危機感しかなかった今年のチームをインターハイでベスト4、ウインターカップでベスト8の『メインコート』まで導いたのは、たった5人しかいない3年生たちの奮闘の成果であり、3年生が後輩に残した最高の財産だったといえるだろう。佐藤コーチはこうも言っている。


新チームの柱である木村拓郎。ディフェンスや力強いドライブ、ミドルシュートに安定感が出てきた

「留学生相手の戦いを問い詰められなかったのはコーチの責任で、これからはもっと対策を考えた練習をやっていきたいと思います。私は子供たちとの心の結びつきが試合に出たときがいちばん大好きで、勝ち負けよりもそっちのほうに感動します。そういうゲームはできました。今年は、今までの上級生を中心とした絆の仕上がりと、今後を見通して頑張ってもらわなければならない下級生のポイント作りの両方を勉強させてもらった1年でした」

メインコートでは1年生の#6越田、#9加藤、#11浅原がインサイドプレーのみならず、アウトサイドシュートを何度も試みている。#6越田にいたってはガードのプレーに挑戦中だ。メインコートで得た経験と、この1年間で苦心したプロセスを次に生かしていくのは「これからはもっとオフェンスの爆発力をつけ、苦しい場面で引っ張っていきたい」と誓う2年生の#7木村拓郎ら、たくさんの可能性を秘めている下級生たちの番だ。

文・写真/小永吉陽子


シェアはこちらから!!

新着記事

高校バスケ特集企画

トップへ戻る