2017/06/1

めざせ!2017インターハイ 【注目選手】 八村 阿蓮(明成#8/194㎝/C/3年)

八村 阿蓮(明成#8/194㎝/C/3年)
Aren HACHIMURA


5月の能代カップでひと皮向けたプレイを見せた八村阿蓮

“八村塁の弟”という代名詞を返上
真のエースに進化中

 明成の佐藤久夫コーチは毎年、入学してきた選手に「高校生活のバスケットなんてまばたき3回だ。あっという間に終わってしまうぞ」と、声をかける。今の3年生にしてみても、入学前の冬、ウインターカップ会場である東京体育館のスタンドで声を枯らして応援していたのがつい最近のような気がする。八村阿蓮もその一人だ。

 名前からわかるように、阿蓮の兄は明成からゴンザガ大に進学し、日本人として初めてNCAAトーナメントに出場した八村塁である。弟が明成に入学して以来、一緒にコートに立つ時間は短かったが、時折コートで兄弟そろって出ることもあった。一昨年、インターハイで初優勝を遂げ、ウインターカップ3連覇を成し遂げたあとも、兄の塁は阿蓮によくセンターポジションの指南をしていた。自分が卒業した後に、弟がセンターの後釜になるからだった。

 昨年、明成はインターハイ2回戦、ウインターカップは緒戦敗退で終わった。阿蓮はスターターとして名を連ねたが、ボールが阿蓮まで回らず、エース候補らしいことはほとんどできなかった。そんな1年間を払拭しようと、新チームでは変革が始まった。

 阿蓮自身も、ポストアップした時にボールを呼び込む“面取り”から変化が見られた。佐藤コーチの持論はボールが中に入ればセンターはインサイドのガードとして攻撃の基点となり、ボールも回る。#6相原アレクサンダー学(以下、アレックス)からのアシストも量産され、アレックスがインサイドに飛びこんで阿蓮と合わせるコンビプレイもおのずと増えてきた。チームプレイが増えたことで、オフェンスのバリエーションが多彩になっているのは明らかだ。それが1月の宮城県新人大会でようやく光が見えてきた。このあたりから、阿蓮にもエースの兆しが現れてきた。


インサイド主体だが、時折外にディフェンスを連れ出して外角のプレイもこなす

 コンビを組むキャプテンのアレックスとの絆は、ことのほか深い。 「アレックスも自分と一緒のハーフなので、2人でコンビを組むと相棒みたいな間柄です。自分がダメな時にアレックスが1対1で解決してくれる」と言う阿蓮。

 相棒・アレックスから見た阿蓮は、「頼りにはなるけど、だらしないところがまだ少しある。でも、リバウンドとか自分が外した時にフォローしてくれるから、大きな存在です。梅丘中(東京)時代はあまり阿蓮にパスをすることはなかった。でも今は、阿蓮と連携プレイを作ったり、そういうところが変わってきた」と、キャプテンとしての手厳しさと信頼感の両面から阿蓮を評する。

 また、阿蓮を語るときに避けて通れないのは、やはり兄の存在だ。メディアで取り上げられるたびに、いつも名前の前には必ずこう書かれた。“八村塁の弟”と。それは気にならないのだろうか。

 「八村塁の弟と呼ばれるのは、うれしいとも、嫌だとも思っていないです。同じ兄弟で、アメリカのすごい舞台に立っていて、本当に尊敬できます。塁と連絡は一応取っています。もっともバスケの話はあまりしないけど(笑)。(ゴンザガ)大学の様子はどう? みたいな感じです」
 外野の杞憂をよそに、どうやら阿蓮は意に介していなかった。自分たちの代になって着実に成長してきたという自負が芽生えたからかもしれない。


ゴール下では2人、3人と厳しいマークが寄ってくる。3年になり体幹も強くなってきた

 明成は5月の能代カップでチームとしてひと皮むけた。緒戦の洛南戦では、出だしでつまずき、阿蓮は5ファウルで退場。ビハインドから最後はオールコートプレスを仕掛け、残り1分で同点とするも勝ちきれずに黒星スタート。しかし、以降は負けなしの5連勝だった。大会前にディフェンスに重点を置いてきた強化が、如実に現れていた。何より、阿蓮とアレックスの2人がたくましき変貌を見せた。

 明成はガード陣を含め全員がリバウンドに飛び込むが、阿蓮のリバウンドは頭一つ高い位置にある。身体を張ってセカンドショット、サードショットをねじ込むようになった。ファウルがこんでも、ファウルアウトをしなくなった。特に、福岡大附大濠戦での躍動感は凄かった。佐藤コーチは能代カップにおけるチームのテーマを「我慢する時間帯からの爆発」と語ったが、それを見事に体現した試合となった。

 「自分が崩れたら、チームも崩れると思っています。初日も自分が崩れてしまった。心の面で準備ができていなく、自分の仕事がまったくできなかった。途中で集中力が切れてしまうことがまだある。そこがダメだと久夫先生から言われているので、それをなくしていきたい。先輩たちがこの能代カップで全国の強豪と対戦をし、勝って自信をつけてきた。自分たちもここからも勝って自信をつけたい」と、反省とともに手応えを口にした。

 目指しているのは、中も外もできるオールラウンダーだ。NBAでは圧倒的な支配者であるレブロン・ジェームスが好き。気になる選手は、大倉颯太(北陸学院)選手だ。「石川県の新人戦決勝で金沢に一度負けたじゃないですか。そこから颯太がどれだけ頑張って、意地を見せるのか、そこが気になる」と話す。

 兄の塁も佐藤コーチの厳しい指導によって追い込まれ、乗り越えたからこそ現在の八村塁がある。阿蓮もこれからさらに怒られたり、精神的に突き落とされたり、練習でよりハードな練習に対峙しなくてはならなくなる。だからこそ、まだまだ伸びしろがあるとも言える。それをクリアする自信があるかと尋ねると、阿蓮は大きくうなずいた。

 この夏に向かって、明成のエース・八村阿蓮が、どれだけ進化を遂げるかに期待したい。


取材・文/清水広美
写真/若生悠貴


試合直前、スターターに声をかける佐藤久夫コーチ


能代カップでは市立船橋戦を契機に、チームは上昇ムードになっていった


※宮城県インターハイ予選は、6月3日(土)ー5日(月)、白石市にて開催
※東北ブロック大会は、6月24日(土)、25日(日)、青森県青森市で開催

◆次回の「注目選手」の紹介予定
 
 ◇相原アレクサンダー学(明成#6/186㎝/SG/3年)選手……6月2日掲載

◆注目選手◆バックナンバー
 ◇津田 誠人 (洛南 #6/192㎝/F/3年)
 ◇星川 堅信 (洛南 #15/188㎝/SF/1年)
 ◇伊藤 領  (開志国際 #4/180㎝/G/3年)
 ◇和田 蓮太郎 (開志国際#13/197㎝/SF/2年)
 ◇児玉 海渡 (能代工業#5/184㎝/F/3年)
 ◇新田 由直 (能代工業#6/188㎝/PF/2年)
 ◇保泉 遼 (市立船橋#4/181㎝/SG/3年)
 ◇野崎 由之 (市立船橋#7/180㎝/SF/3年)
 ◇中田 嵩基 (福岡大附大濠#13/173㎝/PG/2年)

 ◇土家 大輝 (福岡大附大濠#12/173㎝/PG/2年)
 ◇星野 京介 (中部大第一#4/182㎝/SF/3年)
 ◇坂本聖芽 (中部大第一#5/181㎝/SG/3年)

◆能代カップのレポート、結果などはこちら
◆能代カップで光ったルーキーたち01、02はこちら
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